ジェノヴァにつづき、もうひとつの海洋大国であったヴェネツィアを訪れている。晴れの日の午前7時、東の空に上がりゆく太陽はその水上に浮かぶ町を洗い流すかのように少しずつ照らしはじめる。5月、ひんやりとした澄んだ空気が何とも心地よい。
人影まばらなサンマルコ広場に立つとそこがかなり広大であることに気づく。太陽光パネルのように敷き詰められた石板が光を放ち、そこが巨大な歴史の舞台と化すのである。
実際、31歳のジュゼッペ・ヴェルディはそこへ立っていたのである。オペラの台本を担当していたフランチェスコ・マリア・ピアーヴェと肩を並べて、あるいは老舗のカフェ・フローリアンに立ち寄りデミタスカップを口に運んでいたのかもしれない。
スカラ座での実績を残したヴェルディが、ヴェネツィアのフェニーチェ劇場より依頼されて「エルナーニ」に取り組み、上演準備のためにこの地を訪れていることは史実として残っているが、どこでどのように過ごしたかまではわからず、しかしそこを想像することが巨匠の作品や作曲の足跡を紐解くヒントにもなる。
台本作家ピアーヴェは、ヴェネツィアのムラノ島に生まれている。1842年よりフェニーチェ劇場の座付台本作家となり、1843年より1844年にかけてかなり多くヴェルディと接触したことが予想され、台本を請け負った「エルナーニ」、そして次作の「二人のフォスカリ」について若かった二人は根をつめて話したはずである。
ヴェネツィアでの「エルナーニ」の準備中に、ローマのアルジェンティーナ劇場との間に次のオペラ「二人のフォスカリ」の契約が成立する。傍らにピアーヴェがいて、水の都ヴェネツィアが舞台となる作品の書き下ろしが決まった。実話を深く読み込み、周到な準備を怠らぬヴェルディのことである。バイロンの書いた救いようのない話にオペラとして息を吹き込むにあたり、ここ自分自身の脚で立っている町がヴェネツィアであるのであれば視察を行わないわけがない。
フェニーチェ劇場から、その当時もうヴェネツィア共和国の観光のスポットでもあり、オペラの舞台となったとドゥカーレ宮殿まで歩いて10分も掛からない距離である。宮殿の中にピアーヴェを伴ったかどうかはわからないが、15世紀を生きたフォスカリ親子とその当時の共和国の在り方を知るために、ヴェルディは政治の中枢でもあった宮殿内を歩いたに違いない。
作曲家が作品の構想を練るためにそぞろ歩いたであろうその足跡を辿り、そして実際、書き下ろした作品を観た時に、時を隔てて生きたマエストロと邂逅したような気分になる。
堂満尚樹(音楽ライター)
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◆指揮:A.ソディ ◆演出:M.マルトーネ
◆出演予定:L.サルシ、V.ゴイコエチェア、A.ディ・マッテオ、A. ポーリほか
フィレンツェ歌劇場 10月14日(火)20:00開演
●ヴェルディ《リゴレット》
◆指揮:M.アルミリアート ◆演出:M.マルトーネ
◆出演予定:A.エックバート、V.グリゴーロ、R.ミューレマン、M.ベッリほか
ミラノ・スカラ座10月16日(木)20:00開演
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◆指揮:E.ピド ◆演出:L.ペリー
◆出演予定:J.D.フローレス、J.フックス、P.スパニョーリ、B.フリットリほか
ミラノ・スカラ座10月17日(金)20:00開演
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*※上記のほか下記の公演も鑑賞可能です。(別料金)
ミラノ・スカラ座管弦楽団&合唱団コンサート
指揮:R.シャイー ソリスト:C.カルク、C.マルトマン
曲目:シェーンベルク《ワルシャワの生き残りOp.46》
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